ミツバチのワーカーはメスでも子供を生まずに姉妹の世話ばかりをする。それはなぜか。ミツバチはアリと同様に、単・2倍体という特異な遺伝形式をもつ。メスはわれわれと同様に両親から1組ずつ受けた2組の染色体をもつ(2倍体)のにたいして、オスは未授精卵から育つため、1組の染色体しかもたない(単数体)。つまりオスには父親がいない。またメスは父親の全遺伝子を受け取り、これに母親の遺伝子の半分を受け取る。このことから計算すると、姉妹どうしは遺伝子の4分の3を共有していることになる。異常に血縁度が高いのだ。親子の間の血縁度は2分の1だから、メスは自分自身の子どもより、姉妹との血縁度の方が高い。つまり、自分で子を産むよりも、姉妹に献身した方が遺伝子を多く残せるのだ。このことからアリやミツバチ、および多くの狩りバチに特徴的な、自分は子供を産むことのない、献身的な姉妹相互の「真社会性」の高度の発達が説明される。