小熊 過渡期なのかどうかはわからないですが、まずあなたもご存知の通り、雇用慣行が変わらなければだめです。新卒一括採用が中心で、フリーター経験のある人間を雇いたいという企業は1.3パーセントという状況が変わらなければね。それから、日本のセーフティーネットをこれから整えるかどうかということになってくると、財政は苦しいから難しいところです。
日本のフリーター層は、大卒や大学院卒もいますが、やはり高卒が多くて、高校卒業のときに正規雇用ルートに入っていけなかった人たちです。90年代に高卒労働市場は1/5くらいに減ってしまった。昔だったら高校から工場に一括採用してもらえたようなルートが崩壊し、高校を卒業してフリーターになるしかなかったような人たちがたくさんいます。いったんそのルートに入ってしまうと、現在では将来のモデルはほとんどありません。
日本で若年失業率が、ヨーロッパのようには上がらないのは、一つには働かざるをえないからです。つまり、敗者復活の機会がないからです。ヨーロッパなら、時給数百円の非正規雇用でずっと働くくらいなら、失業保険でしばらく耐えようとか、その間にもう一回学校に行ってキャリアアップして正規雇用に就こうと考えます。しかし日本ではそういうモデルが成り立っていない。学校に行きなおしたところで、新卒から漏れると正社員になれる目処がないから、時給800円でも働くしかない。
アメリカやヨーロッパだったら、展望もなしに非正規でずっと働く若者が少ないから、若年失業率が上がって移民が入るんです。ところが日本では、正規雇用のチャンスを永遠に失い続ける若者と、女性と子育てを終えた主婦が働くので、移民が必要ない。移民なみの条件で働く人たちがいるからです。