今の農業団体に来て、大卒の社員が泥だらけになって大型トラクターを乗り回したり、IT管理をとっくに導入していたりしていることを目の当たりにするとゲッという顔をします。
なぜか農業は老人だらけだそうで、先がないそうですから、中堅どころの家族農家にはほとんど若い後継者がおり、収益計算をしっかりとした農業経営をしていることを知ると、なにかの間違いで例外に違いないと思うようです。
農業者は脳味噌を使わないでただ黙々と鍬で畑を耕していると思っているので、農業分野ほど新しい生産技術や機械が取り入れられている所がないことがわかると、ウソだろうという顔をします。
日本農業の各種野菜、果樹の生産性の高さを知るとだいたいびっくりします。なぜか農業はぬるま湯に漬かっていて既得権の鬼だからのようです。
現実にはそんなぬるま湯産地などはたちどころに立ち行かなくなり、どんどん脱落して行っています。産地によっては同業者視察を断る所もあるほどで、その産地間競争たるやちょっとやりすぎだろうと私も思うくらいです。
こんなに国内競争が激しいので、もちろん弊害もありますが、どんどんと規格は厳しくなり、食味はよくなり、鮮度はよくなっています。ジャパン・プレミアムと外国の農業団体からイヤミを言われるほどです。
外国農産物の関税は5%前後ですが、よしんばゼロ関税にして上陸しても私たちと同じ土俵で闘うのは困難でしょう。輸入農産物の多くは、まずくて、規格がひどく、質が悪すぎます。
私たちは、米国はそのうちISDでこのジョャパン・プレミアムを関税外障壁だと言ってくるだろうなと笑っています。
補助金漬けだと思っているので、今の気の利いた農業者はそんな農水省補助金など使うとかえって高いモノにつくので、自分で工夫して経費削減していることを知りません。
民主党が票目当てで「農家戸別所得保障制度」などという、人聞きの悪い制度を作ってしまったので、農家は所得すら政府が補償してくれるのか、というトンデモな誤解がはびこっています。
あれは減反奨励金の変形パージョンだと説明するのがメンドーなので、遠からずなくなるでしょうから放ってありますが。
減反といえば、だいたいの都会の人は兼業農家(官称「自給的農家」)と、専業農家(官称「主業農家」の見分けがつきませんから、いつもは町に働きに行って、その上米の収入ももらえて普通の勤人よりリッチだ、というどこで聞いたのかわからないような話もよくされます。
兼業農家は「村の人」でアマチュア、専業農家がプロの農家だからね、と言うと、なんで農家に二種類あるんだと問われます。
農水が勝手に区分けしているので知ったことではありませんが、これは稲作の水系を協同で利用しているために兼業でもやってもらわないと荒れて困るのだと事情を言っても、いや補助金をくすねるためだろうと勘ぐられます。
有機農業というと、なぜか小規模で草むしりをしていなければなりません。草むしりはしますが(笑)、大規模な有機農家や団体もたくさんあります。
大規模がいい悪いというのではなく、それぞれの条件で選べばいいだけです。ただ、農業技術は家族労働の中で継承されていくものだという原則を逸脱せねばいいのです。
大規模経営こそが日本農業前進のための条件ではないだけです。小規模でも付加価値の高い渋い農産物で勝負している農家もいっぱいあります。
耕地がヨーロッパの20分の1で狭過ぎて非効率的だから農産物が高い、と評論家によく言われますが、ヨーロッパは連作が効かない麦類が耕地の輪作の3分の2を占めています。
だから使っている正味は、日本とさほど大きな差はありません。生産効率でいえば互角でしょう。温帯なぶんだけ日本のほうがいいかもしれません。
農産物価格は、為替レートが変動しますので安易な比較はできませんが、先進国の所得に対しては、特に安くはないでしょうがごくフツーの先進国相場です。ドイツでキャベツを30円で売っていたら買って帰ってきて下さい。
ただひとつだけ言えるのは、日本農業ほど誤解を受けて、敵意を向けられている国は先進国では稀であることは確かです。
なにせ昨日も「農家はテロリスト」とまた言われましたしね(苦笑)。ああ、しつこい。なんだあの粘着質は。
福島県農家が放射能の数値を知っていてわざとやったのならば責任の一端はあるでしょう。しかし。現実には農家が再三に渡って田植え前から調査の厳格化を求めたのに対して国も県もその要求に答えなかった結果なのですから、農家に責任があるはずがありません。