動物はとかくメスの獲得をめぐるオス同士の争いが熾烈になる。対してメスはどんなオスを選んでも自分の遺伝子の継承についての不安がない。
ほっておいても、勝ち残った強いオスがきて優性結婚が果たされる。甲虫の仲間にはオスが強大なツノを持つ種類が多いが、その機能については古くから多説があった。これが、餌場やメスをめぐる闘争の武器であることがわかったのは比較的近年のことである。
かくして、ツノの大きい個体が有利に自然選択される……はずである。ところがカブトムシ類の多くの種類は、大ツノの大型個体に混ざって、みずぼらしい小ツノの小型個体も存在し、これが連続的な変異ではなく、
“多型現象”であることがわかっている。どうして、メスをめぐる闘争に勝ち目が薄い小ツノの遺伝子が淘汰されてしまわないのであろうか。
最近、ある種のカブトムシで明らかにされたそのしくみは単純である。つまり、小ツノは大ツノよりも早く羽化し、強い大ツノが現れる前にさっさと交尾をすませてしまうという。