信頼ゲームは「投資者」と「受託者」という2人の被験者で行うゲームです。最初に投資者には一定の金額が支給されます。次に投資者は手元の資金から受託者に投資する金額を決め、受託者は投資者が投資した金額の「3倍」を受け取ります。次に受託者は受け取った金額のうちいくらかを「返礼」として送り返します。この返礼に金額の制限はなく、手元の資金を全額渡しても、一切渡さなくても構いません。投資者が受託者からの返礼を受け取った時点でゲームは終了です。
たとえば、最初に投資者に10ドル(約1100円)が支給されるとします。もし投資者が「受託者は手にした金額を全て自分のものにして、返礼を一切してくれないだろう」と考え、受託者を信頼しなければ、最初に投資者が受託者へ送金することはありません。この場合、投資者が10ドルの利益を得て、受託者が得る利益はゼロです。
一方、投資者が「こちらが投資した額以上を受託者は返礼してくれるはずだ」と考え、受託者を信頼した場合、投資者から受託者に送金が行われます。たとえば、投資者に10ドルが支給されたとします。実際の実験では支給された金額のうち50%ほどを送金するケースが多かったため、5ドル(約550円)を送金するとします。
この場合受託者が受け取れる金額は5ドルの3倍である15ドル(約1600円)となり、受託者がもらった全額を独り占めにしようとして一切返礼しなければ、投資者の利益は5ドル、受託者の利益は15ドルとなります。しかし、人間を対象にした信頼ゲームでは多くの場合、受託者は受け取った金額のうち40%ほどを投資者に返礼するとのこと。受託者が15ドルのうち6ドル(約660円)を投資者に送金すると、最終的に投資者の利益は11ドル(約1200円)、受託者の利益は9ドル(約990円)となり、投資者が「一切送金しない」と決断した場合の投資者10ドル、受託者0ドルよりも双方共に得することができます。