一旦知ってしまえば、知らなかった時には戻れない。本にせよ、スーツにせよ、シガーにせよ、酒にせよ、別に知らなくても生きてはいける。でも知ってしまえば、それなしの人生など耐え難くなる。

 つまり知識や経験は人生に悲しみももたらす。より多くを、より良きものを、よりスリリングなことを知ってしまったがために、当たり前の日常に感動できなくなる。それでも、知らない平穏よりも知る悲しみのある人生の方が高級だと開高さんは言っていた。全く同感だよ。

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