アップルのiPhone(アイフォン)だ。同社のスティーブ・ジョブズ会長(当時)に対して、このような製品を開発してはどうかという提案がはじめてされたのは、2001年のことだった。ジョブズはそのアイデアが気に入った。特に、通信業界に地殻変動を起こせる可能性に心を揺さぶられた。当時、通信業界は最も収益性が高く、最も急速に成長している産業だった。しかし、ジョブズはそのビジョンの実現に向けたプロジェクトにゴーサインを出さなかった。

 ジョブズは幹部チームにきっぱり言い渡した。アップルの関心とエネルギー、そして重要な資源は、2つの戦略上の優先分野に集中させるべきだ、と。その2つの分野とは、音楽を聴くための新しい方法であるiTunes(アイチューンズ)とiPod(アイポッド)だ。

 しかしその一方で、数人のエンジニアにスマートフォンのコンセプトをさらに探求させ、試作品をつくらせて、ほかの通信企業との連携を模索した。そして3年後の2004年にようやく、正式なプロジェクトがスタートした。

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