宇宙放射線は、ほぼ光の速さまで加速しながら宇宙空間を移動する過程で電子を失った原子の集まりで、例えば恒星が爆発した直後などに発生する。その形態は、大きく3つに分類される、地球の磁場に閉じ込められた粒子、太陽フレア(太陽で発生する爆発現象)の発生時に宇宙空間に放出された粒子、銀河宇宙線(GCR)である。銀河宇宙線は太陽系外から飛来する高エネルギーの陽子と重イオンで構成されている。
この宇宙放射線は、NASAが2020年に発表した研究において、宇宙飛行士が直面する健康面の最重要課題のなかでも、特に危険度の高い「レッドリスク」のひとつに挙げられている。DNAを傷つけ、突然変異を誘発してがんの発症を招く恐れがあるからだ。またNASAの公式サイトによると、心臓障害や血管狭窄などの心血管系の機能障害、認知障害につながる神経系の問題を引き起こす可能性もあるという。