「嗚呼、
  人は困った時にこそ、
  初めて本当の節義が見られるものだ。
  普段、
  無事に村や街に住んでいる時には、
  懐かしがり悦び合い、
  酒食や遊びに呼んだり呼ばれたりして、
  大きな事を言ったり無理に笑い話をしたり、
  お互いに譲り合い、
  手を取り合って肝肺を出して相示し、
  太陽を指し涙を流して誓いをたて、
  生きるも死ぬも背かないと言えば、
  如何にも本当らしいが、
  一旦髪の毛一筋ほどの利害関係が生じれば、
  今度は眼を背けて知り合いでも無いような顔をしている。
  落とし穴に落ち込んでも、
  一度でも手を引いて救ってやろうとしないばかりか、
  かえって相手を突き落として、
  上から石を投げるような真似をする者が、
  世間いたる所に居るのである。」

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