昨日の【雑誌原稿書き方基礎講座】で使ったKeynoteに書いていたことを改変・再編集してアップします。全111条。僕が個人的に積み重ねてきたノウハウです。ライターだけでなく編集者としての心得も混じっています。仕事をしてきた出版社が違えば、このノウハウも違うものになったでしょう。だからあくまでも私家版です。デザイナーや建築家やアーティストや工学研究者の取材記事執筆を前提にした話であることをご了承ください。

*アップデート情報
・全110条を全111条にしたり、第74条を追加して他を統合したりなど、こそこそ修正しているので、3/5にアップしたものとは少し変わっています(3/8記)
・95条の説明に奥義を追加しています。43条追加。41条を統合(3/12記)

001) いろいろ試したがやっぱり起承転結。
002) ツカミが大切。
003) 「結」は軽めに。最後に大事なことを書いても、雑誌の場合、読者が最後まで本文を読んでくれるとは限らない。
004) キーワードをつくろう。
005) 二項対立を考えると論理的な叙述となる。
006) ほとんどの難解な文章は、専門用語の多用と筆者の文章力の欠如のせい。
007) 難しいことはやさしく。世の中のたいていの難しく見えることの本質は、シンプルな原理でできている。数式が理解できないジャーナリストでも科学を伝えることができる。
008) センテンスは短く。長い文章は必ずどこかで切ることができる。
009) 音読して推敲を。 でも、家族に迷惑なので、僕は頭の中で発音する「黙音読」するようにしてます。文章のリズムやキレを確かめたいときはやっぱり音読。
010) リズムを学ぶには名文を書写しよう。 あっコピペじゃ意味ないよ。キーボード打ったり、ペンを握って。
011) 体言止めはなるべく使わない。 (キャプションでは頻出可)
012) である調、ですます調。基本はどちらかを選ぶ。効果的に混在させる方法もあり。混在させるときはリズムを確かめて慎重に。
013) 接続詞は減らそう。最初に書いた接続詞をとってみても文意が通じる場合がある。
014) 主語、述語は常に意識すること。
015) 英語に訳しやすい文章を心がけると、文意が明快になる。
016) 「すごい」は使わないように。どうスゴイかを別の言葉で表現しよう。どうカワイイか、どうカッコイイか、どう美しいか、どうイケてるか、どうヤバイか。
017) ステレオタイプの言い回しはなるべく使わない。◎◎さんの今後に期待したい。体当たり演技でヌードを披露。
018) 「物は言いよう」の精神を忘れずに。
019) 繰り返し同じことを書かない。テレビは感動シーンを何度も流すが、雑誌は同じ文章は載せない、同じ写真は載せない。
020) 雑誌原稿ではなるべく同じ動詞を直近で繰り返さない。言った。語った。野菜をつくる。野菜を育てる。使う。使用する。用いる。
021) 「の」の連続は3つまで。美しい文章を目指すならMAX2つを心がける。ただし文章を長くするより、3つ「の」を続けたほうが収まりのいい場合がある。◎◎さんの元彼の従兄弟の紹介。
022) 長い文末表現はなるべく使わない。カワイイはないはずはないであろう。表現しようとしているわけである。
023) 難読漢字にはルビ(ふりがな)をつけよう。
024) タイトルとキャプションだけ読んでも面白い記事にしよう。
025) 雑誌はノンリニア。小説や新書はリニア(線的な)メディア。雑誌は、タイトル、写真、本文、リード、キャプション、小見出しなどの要素が連携しながら自律して読者を惹きつける多層構造をもつメディア。
026) 読者のための入り口はたくさんつくる。どの記事からも読める。タイトル、リード、小見出し、キャプション、イラスト、写真は読者を誘う入り口。雑誌の写真やイラストは本文の説明のためのものではない。
027) 雑誌は身体的メディア。雑誌は単行本より、読み手に複雑な目の動きや手の動きを要求する。単行本や新書では目の動きは行ごとに折り返すものも一直線。手の動きも一方向に繰るだけ。雑誌は身体に近いメディアだという認識を。だから息つぎやリズムが大切になる。
028) タイトルの文体は雑誌の個性。
029) キャプション字数のMAXは80~120字。(僕の経験的感覚から出た数値ですが)
030) キャプションの内容はある程度本文と重なってもよい。
031) 長文には小見出しを。文章の途中からでも読めるようにするのが小見出し。文頭から読んでくれる読者にとっては、大切な休憩所。
032) 小見出しを入れる位置は、内容だけでなくレイアウトや文字量で判断も考慮に入れる。
033) 小見出しは段落末に来ないように。
034) リードは本文を読んでもらうための宣伝文句。読みたくなる文章を。
035) 改行後の1~2字余りは、前の文章を削って送りこむ。
036) 句読点は読み手と書き手の体のリズムを合わす装置。句点の打ち方に正解なし。無闇な、打ちすぎは、リズムを、壊す。センテンスが長いのに句点を打たないと区切りがわからずリズムが生まれない。ひらがながつづくときは、ちゃんと打とう。
037) 改行は息つぎ。改行がない文章は息苦しい。
038) 雑誌原稿では、行幅(1段の文字数)を考えて、改行を考える。行幅短めは多めに改行を。
039) 文末に「──」や「……」を使うと余韻が生まれる。藤沢周平を読もう。 でも、使うのは1つの記事で1〜2回まで。
040) 口語表現を意識して使おう。使いすぎは避けよう。親密さ・ライブ感の演出として効果的に使う。
041) とかとか書くな。「とか」「って」「(文末の)けど」「じゃない」「~だし、~だし」などは適度に。
042) 「ちゃう」「じゃん」は方言。方言を使うときは慎重に。多くの場合、方言をそのまま書くのは好まれない。大阪弁でしゃべる建築家。インタビュー原稿をチェックしてもらうと、原稿は標準語になって返ってくる。
043) 文末の(笑)は多用しない。(笑)と書かなくても文章で笑わすようにしよう。
044) ( )はなるべく使わないで表現しよう。使ったほうが読みやすい場合もあるが、頻出は禁物。記事の中に( )が増えると、流れが寸断され読みにくい文章になる。
ル・コルビュジエ(本名、シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ)は20世紀フランスを代表する建築家(生まれはスイス)。→ ル・コルビュジエは20世紀フランスを代表する建築家。出身地はスイス。本名はシャルル=エドゥアール・ジャンヌレという。
045) 注に頼るな。文末注にすると読者の読む流れを分断してしまう。注は引用先の記載などに留めたほうがいい。
046) 「思う」「感じた」「なのではないだろうか」「かもしれない」「でしょう」「ようだ」「みたいな感じ」といった断定を避ける表現の多用は厳禁。
047) 流行り言葉は賞味期限をよく考えて。紙メディアは残る。後で読むと気恥ずかしい思いをしないように。「フォーー!」「ちょいワルオヤジ」「だっちゅーの」は短命。「超」「ビミョー」は長生き。
048) 「彼」「彼女」は使わない方向で。使いすぎは英語の直訳文のようになる。
049) 「とても」「非常に」「かなり」など強調の副詞も連続して使わないこと。 「とても多い」「多い」──後者の方が強い言い切り。「とても」「非常に」には主観が混じる。裏づけデータを明記して「多い」と書くのは客観性のある強調。
050) 漢字の連続は文章を重くする。そのためにひらく。「ひらく」とは平仮名にすること。
051) ひらく勇気を。漢字が書けるからって頭がいいわけじゃない。原稿整理は散髪、雑誌づくりの身だしなみ。
052) 雑誌原稿は論文とは違う。
053) 表記ルールをつくろう。漢字表記は統一しよう。数字の表記統一も考えておこう。下に、フリーペーパー『DAGODA』で使う表記ルールを掲載します。
054) アルファベット表記はカタカナ表記にしたほうが読みやすい。特に縦組みの場合はカタカナ表記で。
055) 縦組みでのアルファベット使用のルールを決める。たとえば4字以下の場合はアルファベットを縦に並べるなど。
056) 外来語のカタカナ表記では「・」(ナカグロ)をどう使うか決めておこう。なるべく使わない方向が一般的。ランチ・タイム→ランチタイム。どこに切れ目があるかわからない馴染みの薄い単語には「・」を入れる。グレースフルデグラデーション → グレースフル・デグラデーション
057) 「」と。の関係。出版社ごとに違う。僕の使い方は、段落内の文末は「……でした」。段落の最後(改行前)の文末では」のあとに「。」をつけない。「……でした。」を使う出版社もたまに見かける。
058) 「」内に「」を使うな。どこが区切りかわからなくなる。『』を使うのが一般的。“”や〈〉なども使うことあり。
059) 文学系はスキャナー 理工系はスキャナ。工学者の文章には語末の音引きが入らない。デザイン・アート系の雑誌なら音引きを入れたほうがいい。でも僕はコンピュータだけは音引きを入れていない。例外というのはどこにもあるものだ。
060) 外国語の正確な原音表記は無理。慣用的な表記を尊重しよう。ゴッホじゃないよ、ホッホだと言い出すと切りがなくなる。
061) 経験的に言って、アート・デザイン系の雑誌は「つくる」を平仮名表記にしたほうがいい。
062) 表記ルールは全員遵守。しかし突っ込みはじめると矛盾点が必ず出るので、運用は柔軟に。
063) 相手が何を言ったかでなく、相手が何を言いたいかを常に考えよう。伝えたいことをうまく言葉にできない人は多い。相手が伝えたいことを汲みとれれば、文章をきれいに整理してあげられる。
064) インタビュー、対談、座談会は、記録ではなく読み物として仕上げる。 最初に話した話が後半再び出てきたときは、2つをまとめても最初の話を後に持ってきて結合させても可。ある質問の答えが突出して長い場合、質問をつくったり「ふむふむ、納得です」という受けの言葉を挟んで、長いコメントを2つに分けるという裏技もあり。もちろん取材相手・座談会参加にできた原稿はチェックしてもらう。
065) 取材相手に原稿チェックしてもらうことが前提なら、わかりにくい表現は書き換えてOK。どこまで大胆に書き換えられるかがプロのライターと素人の違い。
066) 対談、座談会では参加者が別の参加者の発言に手を入れるのは厳禁。下手すると訴訟問題にもなる。自分のコメントのみチェックしてもらう。 流れを変えてしまうような直しは、相手の直したい意図を汲み、流れを変えないように書き直して再チェックしてもらう。「地の文方式」(097参照)の取材原稿なら、当人のコメントと事実関係をチェックしてもらうことはあっても、筆者の観点や意見を変えるような直しは応じる必要はない。むげに断るとトラブルのもとだから、電話して話し合おう。
067) 裏をとれ。
068) 偉い先生が語る言葉が真実とは限らない。
069) わかりやすい話をする人は気を付けよう。話し方がうまいだけかもしれない。
070) 知らない言葉は即調べよう。知らないことを知らないままにするな。調べるクセをつけよう。嘘も方便の「方便」って何? よく考えたら本当の意味を知らない言葉は意外と多い。
071) 人名など固有名詞の表記の揺れはグーグルで多数決。デヴィッド・ボウイかデイヴィッド・ボウイか。
072) Wikipediaを全面的に信用するな。でも、どんどん利用しよう。
073) ひと晩寝かそう。 朝、再度読んで完成。自分が最初の読者。編集者が第二の読者。
074) 「”直すな”オーラ」を発する原稿を心がけよう。編集者も取材された側も、最初は遠慮して赤字(修正)を入れる。しかし直しが増えはじめ、校正紙が赤く染まり出すと、赤という色のせいなのか、次第に暴力的な気持ちになり、最後にはあるブロックを丸ごと書き換えるといった事態にまでなる。ケアレスミス撲滅を心がけ、スキのない原稿を仕上げよう。
075) 紙媒体の間違いは一生残るので校正はじっくりと。
076) 文字校正はなるべく多くの人で回し読みしよう。
077) 人名、団体名は何度もチェック。プロフィールの生まれた年も要注意。僕はあるデザイナーを10歳年上にして恨まれました。
078) 電話番号の校正は、必ず実際に電話すること。
079) ラフを描こう。文章はラフを頭に置いて書く。文字の量、写真の大きさ、位置関係を簡略に示すラフを描く能力は編集者の必須の能力。優秀な編集者は取材現場でサラサラとラフを描く。写真家やライターはそれを見て、仕上がりをイメージしながら撮影したり取材をする。ラフについては「フクヘン」のこの記事で。
080) 取材で面白いと思ったことは全部書こう。ライターや編集者の資質は何を面白いと思えるかにかかっている。
081) 取材が終わったら同行の編集者とお茶しよう。インタビューのどこが面白かったかを編集者から聞き出すのは、ライターにとって第二の取材。編集者が面白いと思ったことを聞き出せば、雑誌の方向に合わせることができる。
082) 取材は過剰に、定着はシンプルに。 10日かけて10分で読める原稿を。
083) 削って削って、最後にくだらんこと言える余裕を残そう。
084) 削りきったと思った原稿も、少し時間をおいて読めば100行(15〜20字詰めで)で内容は変えずに3行は減らせる。
085) エッセイは個人の主観を描く読み物、取材記事は客観性重視。客観的な事実の積み重ねで、自分の視点を伝えよう。
086) 「私」や「僕」を出すのは避けよう。私が主語の実体験の叙述は、読者との距離を縮めるための演出。
087) 客観性は脚で稼げ。
088) リサーチを重ねて断定を。裏付けのない断定、論理的でない断定は信頼を低下させる。
089) 引用先は明記せよ。
090) 読者は数字が大好き(価格、原価、発売日、売上、開発期間、ギャラ、クルマなら最高速度、など)。ただし、クリエイターに数字を聞き出すときは細心の注意を。オマエ数字のことしか訊かないなと思われないように。
091) 取材時の録音機は必ず2台用意する。
092) 時間的余裕のあるときは、一字一句録音起こし。ちなみ僕は出来る限り自分で録音起こしをやるようにしています。そのほうが相手の話のリズムや考え方が体に染みつくので、後から原稿を削ったり表現をわかりやすく整理したりしやすい。
093) ノート取材のほうが原稿執筆の時間はかからない。ただし書き写す訓練を積むこと。
094) 録音機を使うと相手はしゃべりつづける。ノートだけだとたいてい相手は書き写すまで待ってくれる。
095) 話し手もしゃべりながら、うなずいている。そのリズムに合わせてうなずこう。 話し手の頭に合わせてうなずくと、話を聞いていなくても、話し手はちゃんと聞いていると思ってくれる。ここは原稿に使えないという話になったときは、うなずきながら次の展開を考える。録音しているときは、僕は相手の話の2割くらいは聞いていない。うなずくときに声を出さない訓練をすること。「うん」「ええ」「はい」と声を出していると、たまにタイミングの悪いところで「うん、そうです」と言ってしまい、聞いてないのバレてしまう。もちろん面白い話のときは、声を出して頷こう。「いや〜、その話は面白いですね」と受けると、さらに話が深くなる。
096) 目を見るのは大切。ただしタイミングを考えて。日本人は折りをみてじっくり目を見る。欧米人はずっと目を見ていたほうがいい。
097)「地の文」か、「Q&A」か、「談」か。
筆者の文章の中に相手のコメントを「」に入れて構成するのが地の文方式。「地の文」方式はコンパクトに情報をまとめられる。多方面からコメントをとることもでき、読み物としての構成もしやすい。取材側の視点を明確に伝えたい場合に適する。
「Q&A」方式は簡単だが、文章が長くなる。ライブ感は出る。
「談」方式は取材者になりきる。文章力・構成力の試金石。取材相手が何を伝えたいかをライターが明快に理解していないと書けない。筆者の視点は話のどの部分を削りどこを強調するかという文章編集で表現できる。
098) アーティストやデザイナーはナイーブ。「引き出す」という姿勢に徹し、気持ちよくしゃべってもらったほうが面白い話が聞ける。
099) 「でも」の連発にはご用心。日本人の場合、相手の話の受けに「でも、◎◎なんじゃないですか」と自分の意見を言い過ぎると、コイツはオレのことわかってないと思われて、とっておきの本音トークが聞けなくなる。初対面のインタビューの冒頭では、取材相手はインタビュアーとの距離感をはかっている。「間合いの時間」での無計画な自己主張はしないほうが無難。反対意見をぶつけてみるのは、取材の後半、取材相手との距離が縮められたなと思ってからにしよう。
100) 取材相手が年輩の方の場合は、相手の話の腰を折らないように。脱線しても我慢して話を聞く。一通り聞いてから話を元に戻す。
101) 怒らせて引き出すという手段もあるが、本音を言わない政治家や後ろめたいことをやっている企業家向けのやりかた。アーティストやデザイナーや建築家の取材では、怒らせるとあとあと面倒なのでやらないほうがいい。
102) 取材のときは手みやげで好感度アップ。センスが問われる。特に相手が女性のときはじっくり選ぼう。手みやげは2000円から2500円くらいが通常。もちろん安くたって喜ばれます。
103) 相手の資料はしっかり読んでから取材に望もう。1週間前に読んでも忘れる。前日や直前に集中的に読んだほうが効果的。
104) 取材時はおもむろに相手の資料をテーブルの上に並べよう。
105) 質問の内容は事前に考えておいたほうがいい。インタビューが始まったら質問事項にとらわれないこと。流れが大切。僕は、駆け出しの頃には考えたが、今は質問を事前に考えていくことはない。考えていくのは取材時間が20分〜30分しかないとき、欧米人のときくらい。
106) 相手が何を伝えたがっているかを考えて話を聞く。雑談や脱線したような話にも、相手の伝えたい大切なことが潜んでいる場合がある。流れを読んで質問をその場で考えるのは、それを逃さないため。
107) 常にこの話は原稿に使えるだろうか考えて相手の話を聞く。
108) 欧米人は質問に「答える」ことに慣れている。だから外人インタビューでは必ず質問を用意する。日本人は質問を「かわす」のに慣れている。したたかな日本の巨匠は質問を用意してもかわされて、しゃべりたいことだけしゃべって終わる場合が多い。
109) 沈黙を恐れるな。相手が沈黙しても慌てないこと。一回大きくうなづけば相手は自然にしゃべり出す。
110) 取材先にお礼の言葉を添えて送本するまでが雑誌制作。
111) 人をつなげるのが編集者。

ココカラハジマル

■スイマセン丸パクリです

(via hetmek)

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