実は、現状ではマグロ養殖は余り儲かるとは言えない。だいたいがトントンで、経営体によっては赤字だろう。将来的に技術が確立されてくるとコストが下がって、回収できるとふんで、先行投資をしているのである。
値段がどんどん安くなって、庶民の味になったらどうなるだろうか。マダイとハマチの養殖が、現在どうなっているかを見ればわかる。マダイとハマチ(ブリ)は、養殖技術が70年代に確立されて、急激に広がった。その結果、高級魚であったマダイとハマチの値段が安くなった。「めでたしめでたし」というと、そうでは無い。生産現場はかなり末期的な状況だ。
マイワシの不漁と魚粉の国際価格の上昇によって、えさ代が原価の8割以上になってしまった。これに設備投資やワクチン代、種苗代などと入れると、つくる前から赤字確定の場合もあります。マダイやハマチの養殖業者は零細が多いので、夏頃にはえさ代がショートするわけです。そこで、スーパーマーケットに安く前金で販売して、冬場までのえさ代に充てるというような状況になっています。スーパーのために、ただ働きをしているようなものですね。マダイ、ブリの養殖業者はばたばた倒産しています。獲る漁業よりも、むしろ、養殖業の方が経営体の減少率が大きいのです。漁業経営体全体が23/5%減る間に、ブリ養殖業者は34.7%、マダイ養殖業者は40.1%も減っています。