シンガポール経由でのミャンマー出張の帰り、ミャンマーでも使えるSIMフリーの携帯電話を買うのが目的だ。特派員としてシンガポールにいたころ、しばしば訪れた場所だ。
中央のエスカレーター脇にある店に行くと、2人の中国系の店員。そこで、日本メーカー製のスマートフォン(高機能携帯電話)を現金で買ったまでは問題なかった。そこからが、彼らのだましの手口だ。
彼らは「店独自の保証がありますが、99ドルで1年間。1年後に継続するかどうかを選択できる。どうしますか」と聞いてきた。スマホ本体の紛失も保証されるなら、いいかと思ったのが運のツキだった。
保証契約にはクレジットカードが必要だと言うので渡すと、目の前でクレジットカード端末に差し込み、暗証番号を押せという。端末に数字は表示されなかったが不審に思わず、暗証番号を押した。
ところが通常、すぐに端末から出てくる伝票が出てこない。顧客控えが欲しいと言うと、「まだ承認段階だから出ない」と言う。それはおかしいと粘ったところ、店員がしぶしぶ端末を操作、「複製」と書かれた伝票が出力されてきて驚いた。そこには1799ドル(約13万6000円)という数字が…。「何だこれは」と聞くと、「149.99ドルの12カ月分だ。99ドルとは米ドルでの金額。それに1年分とは言わなかった」としれっと言う。
ようやくだまされたことに気づき、キャンセルを要求したが、男は「あんたはカードの暗証番号を押したからキャンセルできない。訴えるならどうぞ。こちらは何の問題もない」
しばらく押し問答を続けたが、何せ周囲も似たような店ばかり、他の店の店員もにやにや笑っているだけで助けようともしない。日本のカード会社にその場から電話をしたが、「調査しますが、難しいでしょうねえ」と心もとない。
最近ミャンマーでもクレジットカードを使えるようになったが、まだ使う人は少ない。一方、シンガポールでは少額の買い物でもカードを使う人は多く、自分もミャンマーからシンガポールに戻ったことで、気が抜けていたかもしれない。