人間の身体は気温が高いと汗を出して対処する。蒸発冷却と呼ばれる作用だ。ところが、湿度が高いとこの作用が効きにくくなる。空気中の水分量が多いほど、身体から出る汗はうまく蒸発して発散されづらくなるからだ。気温が同じでも、湿度が高いときのほうが不快に感じる理由もここにある。
高温多湿は不快なだけでなく危険でもある。人間には、高温環境で体温が上昇すると身体が反応して血液を臓器から皮膚へと集め、体熱を空気中へ放散しようとするはたらきがある(暑いと皮膚が赤みを帯びるのもこの作用からだ)。
そして、極度の高温下ではこのはたらきが破綻し、虚血状態に陥ったり、臓器への血流量が大幅に減少したりする。これが脳や心臓などの重要臓器に障害を起こす場合もある。さらに、高体温は細胞の破壊を引き起こす。多湿環境では発汗による冷却作用が弱まるので、過度の体温上昇や臓器の機能不全のリスクが高まるのだ。