ロサンジェルスのメルローズ・アヴェニューとノースハーパー・アヴェニューが交わる一角は、世界的な観光スポットになっている。エッフェル塔やベルリンの壁のようなものだ。
そうはいっても、有名な建築物があるとか、生きた歴史を体感できる何かがあるというわけではない。ファッションブランド「ポール・スミス」の鮮やかなピンクの外壁の前で写真を撮るために、人々が列をつくるのである(コロナ禍以前の話なので過去形で言うべきだろう)。
この壁は、パントン色見本帳の「Pink Lady」という色で3カ月ごとに塗り直されている。そして世界で最もインスタ映えする場所のひとつとして、数え切れないほど多くの写真の背景になっている。
単なる壁が、なぜこれほど有名になったのだろうか。おそらく、この壁の前でポーズをとる人々が、有名になった自分の姿を想像するからであろう。ここに立って写真を撮り、みんなに気に入られることを期待してアップする。何百もの「いいね!」がもらえたり、知らない人も「いいね!」してくれたりすることを願ってだ。