核融合エネルギーによる発電は、核分裂による原子力発電とは大きく異なる。核融合炉の燃料となるのは重水素と三重水素であり、三重水素を生産するためのリチウムと重水素は海水中から回収可能なため事実上「無尽蔵」のエネルギー源といわれている。

1億℃超に加熱された高温プラズマ中で水素の原子核が融合し、ヘリウムに変換されるときに生じるエネルギーを利用して発電する。この「核融合燃焼」で生じるのはヘリウムと中性子であり、CO₂を排出することはない。

ただし、放射性廃棄物についてはまったく出ないわけではない。重水素と三重水素の核融合では発生する高速中性子のもつエネルギーを利用するが、このとき高速の中性子は炉内の構造物と反応し放射性物質をつくり出してしまう。

しかし、発生するのは低レヴェルの放射性廃棄物であり、その管理シナリオは綿密に検討されている。ある論文では、「ITERレベルの遠隔装置での保守を行うまでには約5年の冷却期間が必要であり、機器のリサイクルを行うまでには、100年程度の冷却期間が必要である」と試算されている。

一方で核分裂による原子炉では、ウランやプルトニウムといった核分裂物質を燃料とし、これらが分裂して別の原子に変わる際に生じるエネルギーを利用する。分裂後には放射性元素が生成され、数十万年から場合によっては100万年の管理が必要といわれているのはご存じの方も多いだろう。

核融合のエネルギー源としての魅力は、CO₂などの大気汚染物質を発生させず、原理的に核反応の暴走が生じない高い安全性をもつこと。そして何よりもその燃料が実質的に無尽蔵であることだ。

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