2014-02-06
「飲み込みが早い人」は何が違うのか会社で働いていたころに、「技術研修」という研修を数ヶ月受けることになった。この研修はIT系の会社にはよくあるタイプの研修で、コンピュータの構成やインターネットがつながる仕組みあたりの講義からはじまって、プログラミングやデータベースの扱い方を学び、最後は業務に即して作られた課題を提出して終わる。
この研修は、基本的には未経験者も経験者も同じように受けることになったので、一応経験者の部類に入る僕には比較的優しいものに思えた。一方で、未経験の人はだいぶ苦労しているようだった。あくまで業務に近い領域までの知識が求められるので、初学者にとってはかなりの「詰め込み教育」だったのだと思う。終盤になるにつれ、消化不良を起こしているであろう人たちが目に見えて増えていった。
そういうこともあって、最後の課題は経験者があっさりと提出し、未経験者は時間を限界までかけた末になんとか提出する、という傾向にあった。ただ、それはあくまで「傾向」であって、中にはまったくの未経験なのにも関わらず、あっさりと課題を提出して研修をよい成績で終える人もいた。別に彼らが、実は経験者だったのに未経験者を詐称していたというわけではない。彼らは明らかに未経験で、それでいながら他の未経験者よりもはるかに飲み込みが早く、まったく同じ研修を受けながらも要領よくその内容を身につけることができたのだ。
以上の話はあくまで一例で、世の中には何をするにしても「飲み込みが早い人」というのが一定数いる。仕事でも勉強でも、「飲み込みが早い」ことは有利に働く。誰だって、可能であるなら飲み込みが早い人になりたいと思う。どうやったら自分も「飲み込みが早い人」になれるのだろうか。彼らは、普通の人と何が違うのだろうか?
そんなことを考えながら、会社でいわゆる「飲み込みが早い人」をずっと観察していたことがある。そうすると、なんとなくではあるが、飲み込みが早い人と普通の人に違いがあることがわかってきた。
例えば、何か新しい知識を習うことになったとする。普通の人は、教えてもらったことを1つでも多く覚えようと努力する。一方で、飲み込みが早い人はなるべく覚えるものを少なくしようと努力する。枝葉を徹底的にそぎ落とし、これを覚えてないともうどうしようもないという部分を抽出してそこの部分の学習に集中する。そういった取捨選択を、自然にやっている。
言い換えると、「上手に枝葉を捨てられる人」が「飲み込みが早い人」になっているようだった。実際、「飲み込みが早い人」にあまり重要でないマイナーな事項について質問をすると、全然答えられない(一方で、飲み込みがあまりよくない人だと、こういう質問にも案外答えられたりする)。でも、それでいいのである。重要度が低いことは、必要になった時に覚えれば現実にはそれでまず問題ない。最初の段階で枝葉にこだわりすぎると学習は迷走し、いつまでたっても「分かってない人」に見えてしまう。
結局のところ、「飲み込みが早い人」の多くは頭の回転が人の3倍早いとか、人より記憶力が10倍いいとかそういうことではなくて、力の配分に優れているということなのだ。効率よく何かを学習しようと思ったら大事なことから順番にやるのはあたりまえだが、それができている人は案外少ない。何を学び、何を学ばないかを決めることで、勝負のほとんどは決まってしまう。
何かを学ぶ際には、枝葉で時間を無駄にしすぎないように、気をつけたい。