私は有料の老人ホームで働いてる。
入所者さんの中に、穏やかで可愛い感じのお婆ちゃんがいる。
仮にAさんとするが、Aさんには一人息子がいて、孫も二人。
ホームからそれほど遠くない所に住んでいるのだが、
息子さんは仕事が忙しくて、年に何回かしか面会に来ない。
孫は正月だけ、お年玉をもらいに来る。
Aさんは家族を恋しがって、面会を首を長くして待っており
その様子を見るのが辛い。

ある時、Aさんの容態が悪くなり、家族に連絡したが
息子さんは「救急搬送するなら、意思確認書を出してあるからいいだろう。
これから大事な会議があるから行かれない」と言う。
それでも生活相談員が「とにかく家族と一度お話したいので」説得し、ようやく面会に来てくれた。

私はAさんの介護のため付き添っており、息子さんが来た時もその様子を見ていた
待ちわびていた我が子の顔を見たAさんは、ボロボロ涙をこぼし
「私ももう先が長くない。短い余生の大事な時間なのだから
時々顔を見せてくれないか。孫にも会いたい」と、拝むようにして頼んでいた。
生活相談員も、「お忙しいのは分るのですが、実のお母様なのですし、もっと面会にいらしては」と、
ちょっと諭すように言った。

152 :名無しさん@おーぷん : 2014/09/17(水)10:49:33 ID:pcrmdQnvM
すると息子さん、プチっと切れたようになり、
Aさんに向かって「あのなぁ、母さん!」と怒鳴った。
「俺が小さい頃、インフルエンザで高熱を出した時も
あんた、俺の枕元に水と菓子パン置いただけで仕事に行ったろうが!
小学生の子供一人で何日も留守番させたろうが!
母さんと一緒にいたいと泣いて頼んでも
母子で一緒にいた日が何日あったよ
誕生日やクリスマスに約束して、何カ月も前から楽しみにしていても
あんた、当日になったら、大事な仕事が入ったからと出て行ったろうが!
老い先短い大事な時間だというなら
子供の頃の時間は大事じゃないのか!」

もっと声を荒げて大変だったけど、こんな意味のことを息子さんは怒鳴っていた。
Aさんはワナワナ泣きながら、「お前を育てようと必死だったんだよ
お前にお金で苦労させたくなかったんだんだよ…」と訴えたけど
息子さんは、ものすごく冷たい顔で
「そうだな。俺も家族のために必死なんだよ。だから時間がないんだ。
経済的に苦労しなかったのは感謝してる。だから俺も母さんを
金のかかる立派なホームに入れている。これでアイコだろ?」
と言って、生活相談員を睨みつけて去っていってしまった。

あれから、Aさんは息子に会いたい、孫に会いたいと言うことがめっきり減った。
ただ、ものすごく暗い顔で、いつもため息ついてる。
このあいだ、
「本当に今更だけど、あの子はこんな気持ちで私の帰りを待ちわびていたんだなと
年を取ってから思い知らされたの…
もう取り返しがつかないのね。息子のためにと頑張ったのに
私の人生は何だったんだろう
これって因果応報なの?」と聞かれ、返事ができなかった。

生活相談員は、「Aさんがそうやって頑張ったから
このホームに入って安心して暮らせるんですよ」と慰めているけど。

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