大企業出身者が敬遠されるようになったのは、もちろん理由があります。多くの場合、大企業出身者ははじめて転職した会社で「頭打ち」になるからです。「頭打ち」とは思い通りにいかないことがいっぱい起こり、うまく活躍できなかったり本来の力を発揮できなかったりすることを指します。

 大企業では当たり前のようにあった有形無形のリソースが、中小企業やベンチャー企業に行くとほとんどありません。そのため、大企業で働いていたときと同じようなパフォーマンスが発揮できなくなってしまうのです。

 とくに大企業と中小企業で差が大きいのは「人材」というリソースです。やはり大企業のほうが相対的に優秀な人材が多く、中小企業は少ないのが現実です。つまり、大企業出身者が中小企業に転職してそこで配属された部署のメンバーたちは、以前の職場と比べ力は大きく劣ることが多い。変わった人、一癖も二癖もある人も珍しくありません。

 社長から与えられたミッションの実現に動こうとしても、そういうメンバーに大企業時代と同じようにコミュニケーションをとってもあまり通じないし、動いてもくれません。ときには足を引っ張られるようなことすら起きます。

 私自身、リクルートを退職して起業したときは驚きの連続でした。最初にキッチンの販売会社をつくったのですが、取引先が平気で約束を忘れたり、欠品を承知で契約したり、ちょっと常識では考えられないようなことがいっぱい起こったからです。しかし、それが世の中の現実なんですね。

 その意味で、新卒からずっと大企業一社に勤めてきた人は「世間知らず」だと言えます。優秀な人たちを集め、隔離された居心地のよい世界で仕事をしているのが大企業で、世の中の現実や厳しさを体験していない。

 その点が中小企業の経営者に認識されるようになった結果、大企業出身者が敬遠される傾向が生まれたと思います。

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