立花・武田と一緒に世界を廻っていたとき、何度も悔しい思いをしていました。
ロシアは、世界のいろんな国にコーチを出していますよね。だからロシア流のシンクロは、みんなが見慣れていて、「いい演技だ」と解釈しやすいわけです。
シンクロは採点競技だから、どうしてもジャッジの主観が入ります。
「ロシアのコーチに世話になっている国のジャッジは、やっぱりロシアに甘い」と思うこともありました。
私は、今でも、日本のコーチがロシアと同じだけ世界に出ていたら、立花・武田のデュエット世界一は、一回で終わらなかったと思っています。
勝っているはずなのに、点数で負けてしまう。それは、世界と闘っている日本のコーチが、私だけだったからです。もっと日本のコーチが世界に出て行かなきゃ駄目。アシスタント・コーチなんかじゃなくて、権限のあるヘッド・コーチや、ルーティン(作品)を作るコーチとして行かなきゃ駄目なんです。
だから、中国からオファーがあったときは、「世界で七番の国に行って、メダルを取らせることができたら、日本流シンクロをアジアだけでなく世界に根付かせることができる」と思ったの。
そして、そう考えると、「その目標に向かって挑戦してみたい、挑戦するべきだ」と、夢が膨らんできました。