武漢ウイルス研究所の研究チームと米国の非営利団体「EcoHealth Alliance」の代表で生態学者のピーター・ダスザックは防護服を身につけ、かすみ網を携えて、鍾乳洞に足を踏み入れた。そこをねぐらにしている数千匹のコウモリから糞便と血液のサンプルを採取し、研究室へ持ち帰り、新型のコロナウイルスに感染していないかどうか調べるのだ。
「当時の探索ではSARSに関連するウイルスを探していました。発見されたウイルス(RaTG13)の遺伝子配列はSARSとは20パーセントが異なっていたんです。興味深くはありましたが、危険性が高いとは思えませんでした。ですから、そのウイルスについては詳しく調べず、冷凍庫に保存しました」