南アフリカの変異株にみられる「E484K」と呼ばれる変異は、免疫を「逃避」する能力をもつことがわかっている。それゆえ南アフリカの変異株には、これまで承認されてきたワクチンの有効性が低くなることが懸念されていた。
実際にこの変異株が蔓延している南アフリカで2月7日に実施された小規模な治験では、英製薬大手アストラゼネカ製のワクチンの有効性は25%以下で、軽度から中等度の感染に対してほとんど防御効果がないと報告されている。南アフリカはすでにアストラゼネカ製のワクチンを100万人分確保しており、翌週から医療関係者への接種を開始する予定だった。ところが、それを一時的に見送るかたちとなっている。
また、南アフリカ変異株に対するジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のワクチンの有効性は57%、ノヴァヴァックスが製造したものは49%だった。さらにJ&J製のものは重症化や死亡に対する保護効果において、85%の有効性が示されている。
このことから南アフリカでは2月11日、アストラゼネカ製のワクチンをいまだ変異株が蔓延していない国々に転売する予定であると発表。代わりに保護効果が示されているJ&J製のものを使用すると決定し、2月17日から医療関係者を中心に接種が始まっている。一度の接種で済むJ&J製のワクチンが使用されたのは、南アフリカが初めてだ。
また、mRNAワクチンの先鋭となったファイザーとモデルナは、すでに南アフリカ株に対抗するための改良ワクチンを開発している。