終局後の羽生善治には、3つの顔がある。勝って険しい顔をする羽生。敗れて穏やかな顔をする羽生。稀なのは、敗れて険しい顔をする羽生である。

 あの時、彼は敗れて険しい顔をしていた。屈辱を直視し、雪辱への闘志を早くも燃やし始めたような表情を浮かべていた。そして言った。

「すごい人が現れたな、と思います」

 詰め襟の学生服を着た14歳の少年を目の前にして言ったのである。

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