小山さんが、自身が受け持つ東北芸術工科大学の“企画構想学科”のオープンキャンパスのときに行ったワークショップでのこと。とある一人のお母さんをゲストに招いたそうです。そして、集まった学生たちにそのお母さんが作ってくれたカレーを見せ、

『このカレーを食べたい人?』

 と食べたい人を募集します。しかし、ちょうどランチの後だったこともあり、誰も手を挙げません。

『でもこれからある情報を伝えることで、きっと食べたくなりますよ。』

 そう言ってそのお母さんに質問を始めます。

『これから息子さんのことを訊いていきましょう。息子さんは何をされているんですか?』

「野球ばかりやっているんです」

『どちらにいらっしゃるんですか?』

「アメリカにいます」

『ああ、そうなんですか。息子さんのお名前は?』

「ありふれた名前ですけど、一郎という名前でして」

『つまりこのお母さんは、イチロー選手のお母さんです。イチロー選手がプロになってからも毎朝食べていると言っていたカレーは、まさにこのカレーのことなんです。ハイ、食べたい人?』

 今度は、全員が一斉に「食べたい!」と手を挙げます。

 そこで小山さんが学生に向かって「これがブランディングというものです。」と教えるという話。

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