弁護士たちは、上層階級出身の候補者ならば性別にかかわらず、大手法律事務所の文化と顧客層にフィットすると見なし、下層階級出身者は合わないと見て却下した。実際に何人かの弁護士は、下層階級の候補者に対し、法務の中でも格や報酬が劣るセクター、たとえば政府機関や非営利組織での職に就くようにアドバイスした。そのような職場では通常、一流法律事務所よりも多様な社会経済的背景を持つ人々が働いている。
ところが、上層階級の女性は、上層階級の男性と同じように「フィットする」と見なされたにもかかわらず、面接に呼ばれなかった。なぜなら、ハードな仕事に対する献身度が他のグループよりも(下層階級の女性を含めて)低い、と評価されたからである。
この調査の参加者や、我々が追加でインタビューした弁護士20人は、上層階級の女性を「離脱する危険」があると表現した。つまり、事務所を辞めて勤務時間がもっと少ない法務職に転職したり、有給勤務自体をやめたりするおそれがあると思われていた。
弁護士たちによれば、こうした女性たちは退職の主な理由として「家族」を挙げるのだという。育児への取り組み方は社会階級によって異なり、富裕層で理想とされているのは、育児に集中的に献身する母親である。このような母親業が、大手法律事務所の「全力でやる以外にない」という仕事のやり方と衝突すると見られていたのだ。