「ロッテは篠塚を欲しかった。でも巨人は『篠塚は出せない』と。それから(候補を)いろいろ出したけど、ロッテから見ればいい名前がない。それでご破算となった。『でも、それだけオーナー同士が交渉しているということは、最後は成立するなあ』と思ったんだ。『どちらかが折れるなあ』と」
「オレは監督1年目で、落合が巨人の4番に座ったら、ジャイアンツの打線はどうなるんだろうと。各5球団の戦力分析するじゃない。その時に、あの時は篠塚、駒田、吉村、辰徳、中畑、クロマティがいた。そこに落合が加わる。勝てるか?って。そうでなくてもピッチャーがそろっているしさ。V9より、上だよ。どうしようかなあと考えたら、これは獲るしかない。ヨソが獲らないんだから。ウチが獲るしかない」
ロッテ側からのリクエストは「牛島和彦」。これは想定外だったという。牛島は星野さんが最もかわいがっていた後輩だった。「小松かな、都かな、杉本かなと。牛島は全くアタマになかった。予想が外れちゃったんだ。困ったなあと思って、悩んでね…」
クリスマスイブの夜に牛島を自宅に呼び出し、説得した。クリスマスにトレードは成立し、発表された。星野さんは牛島の退団会見を報道陣の最後列で見守った。
「『人間・星野』ならできなかった。でも、これは仕事なんだと、自分にものすごく言い聞かせた。『監督なんだ、俺は。ここで情を絡めたら、俺の監督人生はおかしくなってしまう』と」