SPAC(Special Purpose Acquisition Company:特別買収目的会社)です。米国ではメディア事業会社をはじめとする企業が、従来とは違う上場の方法としてSPACを設立する事例が増え、注目を集めています。
SPACの設立は、上場した企業がIPOにより資金を調達する方法のひとつです。つまり、SPACそのものは上場を前提として新たに設立された会社を指し、SPACを介して上場する手段をSPAC IPOやSPAC経由のIPOと言います。
SPAC経由のIPOは従来のIPOのプロセスと順序が逆で、まず上場目的でSPACが設立されます。これは名目上の組織であって、事業会社ではありません。「SPAC自体は資産を保有せず、事業の実体がないペーパーカンパニーだ」
従来の手続きでは、IPO準備会社が上場承認後にまずロードショー(機関投資家向け会社説明会)を開きます。事業内容の説明とともに株式購入意向の聴取をおこない、それをもとに株式の公開価格の妥当性を判断してはじめてIPOに進むわけです。
一方、SPAC経由のIPOでは、名目上の会社SPACが投資家に対し、実体のある事業会社を将来的に買収して運営すると約束したうえで上場します。「投資家がSPAC株の購入を検討する際、その時点ではSPACが上場後にどの企業を買収するか不明なため、出資は白紙の小切手を切るに等しい」と説明します。SPACが「ブランク・チェック・カンパニー(白紙の小切手会社)」とも呼ばれる所以です。
「投資家としては、SPAC設立者たちの評判を少しは聞いているだろうが、彼らが上場後にどういう買収提案をしてくるかは知りようがない。買収先がどんな会社か、取引条件がどうなるかもわからない」