―羽生さんの読みというのは、例えば15手目ぐらいの局面がパッと見えちゃうんですか。

羽生 いや、そういうのは最後の場面で、こういう形で詰み上がればいいなとかそういうのはありますけど、それであとからつじつまを合わせるとかいうのもあるし。後は、今までの指し手の連続の中で、この局面はこの一手でなければおかしいということをよく考えます。つまり、今までの指し手の流れの中からいって、この局面ではこの手が最善手でなければならないはずだっていう仮定をたくさん立てるんです。だから前の指し手があればあるほど、それは次の手を考えるヒントというか材料がたくさんあるということだから、考えやすいんですよ。しかし、序盤はそれが極端に少ないからわからない。だから終盤の方が考えやすいということはありますね。

―つまり最善手というのは今までの指し手を矛盾させない手ということなんですか。

羽生 一局の流れの中で次を見るんです。今までこういう仮定でこういう駒のテンポで動いてきたから、その次は今までの指し手の意味を継承するか、あるいは相手の指し手の弱点を突くか、どちらかの手が最善手であるわけですから。それは多分この手だろうと見当をつけて、それに裏付けを取るということですね。

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