中盤戦になると、右から3番目より右に碁を打つのか、それより左に打つのかという戦略の分かれ目があるそうなんです。右側に打つとまず右側を崩していくという戦略。左側を打つと全体を攻めていくという戦略になるそうなんです。AlphaGoは5番目という中途半端なところに打ってきたんですね。
この手をAlphaGoが打った瞬間、解説者全員が「AlphaGoが間違った」と叫んでました。3人が3人とも「AlphaGoが今間違えました。めちゃくちゃなところに打ってきました。今回は李セドル氏の勝利ですね」と、李セドル氏の勝利宣言をしたのです。
しかし、李セドルさんは、この碁盤を見て顔が真っ青になりました。彼にはAlphaGoのこの打ち手の意味するところが即座に分かったみたいです。そして結局、5番目に打ってきたその打ち手が機になって、李セドルさんは負けちゃったんです。
こういうところに打つという定石は、今までなかったのです。3000年の囲碁の歴史の中で、こんな打ち手をした人間はいなかったのですね。思いもよらないところを打ってきたそうなんです。
その後の李セドル氏の記者会見が面白かったのですが、李セドル氏は「コンピューターというのは、人間が教えたことだけをするものだと思っていたと。だから、人間よりもクリエイティビティがないものだと思っていた。ところが、本当にクリエイティビティがないのは人間の方だった」