西垣 対象が「集団」というのが特徴です。功利主義の欠点としてサンデル氏は、古代ローマにおけるキリスト教信者の虐殺の例をあげています。古代ローマでキリスト教が禁止されていた頃、捕らえた信者をコロッセウムでライオンに食い殺させるという見世物をやっていました。観客は何百どころか何千人もいたかもしれません。でも、殺されるキリスト教徒はせいぜい十数名ていど。そうすると……
武田 多数派である観客が楽しいと言えば、「最大多数の最大幸福」が実現してしまうわけですね。
西垣 そうなんです。でも、虐殺はどう考えたっておこなうべきじゃない。そこで個人の基本的人権を尊重する、「リベラリズム(自由平等主義)」という立場が出てきます。