私たちの祖先である狩猟採集民の一群が、焚き火を囲んでいるときに、近くの薮でカサコソと音がしたと想像していただきたい。ここで必要となるのは、「素早く、ほとんど無意識に」型の意思決定だ。物音は危険な肉食動物によるものだから、逃げようと判断するのか。あるいは、もっと情報を集めて、たとえばウサギなど栄養豊富な餌食となる動物かどうかを、確かめるのか。
衝動性がより強い祖先、すなわち逃げると決めたほうは、探究心がより旺盛な祖先よりも高い確率で生き延びた。逃走してウサギを逸することの代償は、居残って肉食動物に命を奪われる危険を冒すよりも、はるかに小さかった。
このような結果の非対称性によって、人の進化においては、代償が比較的小さい結果につながる性向が優先された。たとえ正確さが犠牲になっても、である。このため、より衝動的に意思決定を下し、情報はあまり処理しない性向が、子孫の代では一般的となったわけだ。