ハサミムシの母親は、卵からかえったわが子のために、自らの体を差し出すのである。

そんな親の思いを知っているのだろうか。ハサミムシの子どもたちは先を争うように、母親の体を貪(むさぼ)り食う。

残酷だと言えば、そのとおりかもしれない。しかし、幼い子どもたちは、何かを食べなければ飢えて死んでしまう。母親にしてみれば、それでは、何のために苦労をして卵を守ってきたのかわからない。

母親は動くことなく、じっと子どもたちが自分を食べるのを見守っている。それでも、石をどければ疲れ切った体に残る力を振り絞って、ハサミを振り上げる。それが、ハサミムシの母親というものだ。

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