「源頼朝は名将だと言われますが、平家追討のときに自分の代理として上洛させ見事に任務を果たした弟の範頼と義経を、ふたりとも殺してしまったことは大変よくないことだと思います」。すると家康は言った。「それは判官びいきというやつで、女子供が井戸端でするような役立たずな悪口だ。頼朝は天下を取られたほどのお人だ。天下を支配する場合は跡継ぎ以外の息子は大事にする必要は無い。まして兄弟など論外だ。親類の誼みで身分を与え領地を多くやることはあっても、それは他の大名とちっとも変わりはない。彼らは立場をわきまえてへりくだり身を慎むべきであるのに、慢心して我が侭な行動をすれば、子や弟であっても見逃すことは諸大名への示しにならない。依怙贔屓をせず適切な処置をすることが天下を治める者の役割だ。ふつうに不行儀だったり無礼なだけだったなら流罪ぐらいでことは済む。しかし逆臣ということが明らかになったのならば、死罪以外はないのだ。それは世の治乱を考え万民安堵を図るためなのだ。単なる国持ち大名と天下人では心得が違うのだ。頼朝は決して悪くない」

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