教科書的な例が「ブローカ失語」です。左の前頭葉が損傷を受けて機能を失うと、発話に障害が現れる。この発話の障害はどういうものかというと、単語をボソボソとしゃべることはできるんですが、それが構文をなしていない。つまり、文法を処理することができないという失語です。
それに対して「ウェルニッケ失語」というのがあります。どのような失語かというと、これは、流暢に言葉が出てくるんです。だけれども、何をしゃべっているのかわからない。意味をなしていないんです。言葉は出てくるんだけど意味をなさないという様相の失語です。
また、別の部位では、フィネアス・ゲージという人の例が有名です。この人は、事故でパイプが脳を貫通してしまいました。前頭葉を損傷するかたちで、パイプが脳を突き抜けてしまったのですけど、奇跡的に彼は命が助かったんです。ただ、人格には著しい変化を伴いました。
非常に怒りっぽくなって、自分の行動の抑制ができない。そして、非常に粗野で乱暴になりました。この、ゲージの人格変化からは、前頭葉の損傷がその人の人格に関係するんじゃないかというふうに考えられるようになりました。