仕込みに入った時に、なんだか視線を感じるなとそちらを向くと、シャペル氏が立っていました。彼は私に、今日の昼に出したものをすべて試食させろと言うのです。
試食をして次々に「これはダメ、これは良い…」と判別していくんです。それが夕方の4時ぐらい。6時になると次のお客様が来られるのですが、ダメと言われたものは下げて違うものを作りなさいというオーダーを出してきたんです。しかも何を作れという指示はありません。何を作るかは自分で決めろと。
兎にも角にも時間がないので、その時間内でできることをやりました。そしてできたものを見せに行くのですが、たいした反応をしてくれない。
そして、翌日もまた昨晩のお菓子を試食して、同じことをするんです。
今思うと、ここで力量をテストされていたんだと思います。この後に私がシャペル氏の元で働いた時に思い知ったのですが、時間がない中でいかにパフォーマンスを発揮できるかというのは、とても大事なことなんです。彼は、それを見極めていたんでしょう。