コモンズとは元来、海や森といった自然の資源をメンバーが共同で管理するやり方だ。実際のところ、牛に食ませる牧草地や海の漁場といった資源の共有は、乱獲によって度々失敗してきた。その歴史をまとめたのが生態学者ギャレット・ハーディンの有名な論文「コモンズの悲劇」(1968年)だ。こうしてコモンズは囲い込まれて私有地となり、資本主義へとその道を譲ったのだ。
コモンズが歴史の教科書の片隅に葬られようとしていたとき、“反撃”として書かれたのが、法学者キャロル・ローズによる「コモンズの喜劇」だった。86年のこの論文もまた、水辺の考察から始まっている。干潮時と満潮時の間の土地は伝統的に公共の財産だった。ローズは、コモンズへの参加者が増えるほどコモンズの価値も指数関数的に上がるような、オープンなコモンズを提示した。そこでは、経済的な価値だけでなく、レクリエーションによるウェルビーイングの向上も価値としてカウントされていた。