母が大腸がんで亡くなる数カ月前のある日の午後、母のベッドに母と叔母が並んで横たわり、ふたりの間に8カ月になるわたしの娘を置いて遊ばせているところに、わたしも潜り込んで合流した。そして携帯電話を取り出して、そのときのふたりの会話を録音した。
他愛もない愉快な話で、しかもすでに聞いたことがある内容だったけれど、わたしは、まるで人生の秘密そのものが目の前で明かされようとしているみたいに、一語一語熱心に耳を傾けていた。幸いにもこの笑いと安らぎの瞬間には、同じベッドの上に人を死に追いやる病気が横たわっていることを、容易に忘れることができた。このときの録音はそのまま3年間、わたしの携帯電話に保存されていた──わたしがいつでも呼び出すことのできる心の支えとして。