世界の音楽には地域ごとに特色があり──それぞれトルコ、インド、アイルランド、キューバの音楽に「聞こえる」のは、主に独自の音色、リズム、チューニングの違いによる。多様なリズムや音色(楽器の特徴的なトーン)は制作ソフトウェアで比較的簡単に再現できるものの、チューニングは別の話だ。
チューニングシステムは、音階やモードのもととなるピッチの集合体で、この主題はこれまでも、音楽と数学と形而上学との不思議な関係を解き明かすべく、歴史上の偉大な人物たちの関心を引きつけてきた。チューニングは音楽をつくるうえで最も基本的な要素でありながら、最も理解されていない要素でもあるとアラミは言う。
(ギター、ピアノ、管楽器などと共に)ほとんどの電子音楽機器は、2世紀前の西洋クラシック音楽の大半にとってその基礎となっている「平均律」と呼ばれるチューニングシステムがデフォルトで設定されている。しかしこれだとヨーロッパ以外の伝統音楽でよく用いられる微分音(基本的なピアノの鍵盤の間にある音)が使えない。