「終局してすぐに浮かんだのは、タイトルを獲得した実感ではなくて、『将棋のことをもう少し考えていたい』という思いでした。最終盤でこれほど複雑な局面は珍しくて、その局面を考える時間は、勝ち負けとは別にすごく楽しい時間でした。『棋は対話なり』と言われますが、人間どうしの対局で選ばれる指し手には、対局者が考えた“意味”や“意思”のようなものが込められます。もう一方の対局者が、その意思を受け取ってまたそれを返す。それが『対話』なんだと思います。もちろん、勝敗が大きな意味を持つ1局なのですが、その中でも、純粋な将棋の楽しさを共有できたことが本当に幸せだったと思います」