イタリアの高級ブランドのエルメネジルド ゼニアが中国に初めて進出した時、中国が同社の成長を牽引する存在になるとはとても思えなかった。当時ゼニアのスーツの値段は北京市民の平均年収の3倍だったことからも、需要がさほど高くないことは予測がついた。それでもゼニアは小型店を数店オープンし、初めて中国に進出した西洋ラグジュアリーブランドとなった。
最初の5年、ゼニアの店舗は赤字営業だったが、初期投資が少なかったため損失に耐えることができた。この手の高級品を流通させた経験がいっさいない中国のスタッフを訓練するために、イタリアからマネジャーを連れて来ている。
実質的に競合がいない中、ゼニアは中国のエリート層の間で抜群のブランド力を構築できた。加えて、外国企業に対する規制の緩和により、現地の販売業者と提携しなければならないという条件が撤廃され、ゼニアの中国市場における収益力はいっそう強化された。
2010年には、つまり中国に初参入してから20年も経たないうちに、ゼニアは同国トップ5の高級アパレルブランドの一つとなり、高級メンズウェアの全売上の50%を占めるまでになった。
ゼニアは現在、世界全体の売上げの3分の1を中国で稼ぎ出している。