山下「同じ高校紛争を経験してはいても、彼と僕では家庭環境も違いますからね。坂本君のお父さんは、三島由紀夫を担当した河出書房の名編集者。聞いたところによると、親戚は軒並み東大という家系だそうで。
僕の家は真逆でね。祖父の代から没落続きなんです。祖父も父親も工場経営に失敗して、小学生の頃から両親は共働き。ずっと鍵っ子でした。しかもひとりっ子なので、おのずとひとり遊びが上手になる。ラジオで落語を聞いて物まねをしたりするような孤独な小学校時代を送ったことは、間違いなく僕の人格形成に影響していると思います。高校時代は留年すれすれのところまで行って、未来のことなんて何も考えられない時期を数年過ごしたし」