イギリスの場合、帝国になる前、17世紀初頭までのテューダー王朝時代はまだ弱小国ですから、外国に対する恐怖心を常に持っていました。
その後帝国へと成長するわけですが、すると今度は帝国としての恐怖心を抱くことになりました。それは具体的には、ネーデルラントを取られるという恐怖です。特に、フランスやスペインといった当時の大国にネーデルラントを押さえられると帝国の存亡に関わる、という意識は、長く続くことになります。
第1次世界大戦がはじまった時、イギリスは中立を保っていました。同盟を結んでいたのは唯一日本だけで、それ以外の国とは組んでいない。
ところが、ドイツはベルギーの中立を侵犯してフランスに攻め込みました。その瞬間イギリスはガラッと変わった。もともとドイツに友好的だったデイヴィッド・ロイド=ジョージさえ態度を変え、宣戦布告して大戦に参戦しました。
第2次世界大戦も同じでした。ナチスはオランダ、ベルギー、ルクセンブルクを全部押さえるわけですが、中でもベルギーは国王が亡命せず国内にとどまり、ドイツの無条件降伏要求を受諾した。これにウィンストン・チャーチルは烈火のごとく怒りました。このように、大英帝国にとってネーデルラントという場所は絶対に譲れない場所だったのです。