渡辺さんの場合は、AIが示す最善手ではなく、あえて2番手、3番手の手を深く研究して、相手があまり想定していない形に引きずり込んでいくという戦い方だ。
最善手は相手も重点的に研究している可能性が高い。しかし、2番手、3番手の手となると、やはり研究が薄くなる。そこに勝機を見出す戦略である。
2022年度の名人戦でも、渡辺名人が2番手、3番手を研究して、挑戦者の斎藤慎太郎八段を破った将棋があった。
斎藤さんの長所でもあり短所でもある真面目で丁寧な性格を渡辺さんに見抜かれ、研究が手薄な局面に誘導された。そこで持ち時間を使いすぎて、前年度と同じような流れで苦戦に陥った。