当時は億万長者になりたてで、火星に興味があったイーロン・マスクが、次のことに気づいた時である。
NASAは30年以上にわたり毎年数十億ドルを費やしているにもかかわらず、人間の火星着陸にまったく近づいていない。宇宙飛行士の月面再着陸さえ、実現できていない──。
彼はNASAが個々の打ち上げを1回限りのイベントとして扱ってきたことに問題があると推測した。少しずつ学んできたとはいえ、基本的には次の打ち上げを白紙の状態から始めていた。部品を再利用せず、再利用の可能性さえも検討しなかった。
「何百万ドルもするロケット段を毎回の打ち上げ後に捨てるのは、ボーイング747を毎回のフライト後に廃棄するのと同じくらい理に適っていない」とマスクは述べている。
再利用性は、この業界に商業活動を生み出すための重要な手段になるだろうとマスクは考えていた。「宇宙飛行の需要が少ない理由は、とんでもなく高額だからであり、問題はロケットが再利用できないこと」であった。