20年以上落ち続けても書くことを諦めなかった。
「10年ほど前に、コバルト編集部から電話がかかってきたんです。『類い稀な才能がほとばしっている』って絶賛されて。連絡はそれきりでしたが、自信を持ちました。それにほかにやれることがあれば、そっちに向かえたんでしょうけど、私には書くことしかない。自分にとって身体的に一番ラクなのが小説だったんです」
昨年もノベル大賞に応募した最大の自信作があえなく落選した。
「『ゲーム・オブ・スローンズ』をロマンス寄りにした感じの物語で、側弯症で片目も奇形の王様が活躍する話でした。物凄いものが書けた、もうこれで絶対に獲るんだ、と思っていたので、三次通過止まりという結果に心がぼっきり折れて………。当時、早稲田大学の通信課程の卒論で『障害者表象』という重いテーマと向き合っていたこともあり、どんどん心が荒み、この暗いどろどろをぶつけるのは純文学しかなかろう、と。そう思い立ったのが昨年の夏頃でした」