他人のことを推論したり理解したりする能力のことを、心理学で「心の理論」と呼びます。
心の理論は幼児期から獲得され発達していきますが、その発達を評価するための課題の一つに「誤信念課題」というものがあります。この課題では、他人が特定の情報を知らない(誤った情報を持っている)状況を理解しているかどうかを測定します。
たとえば、ある部屋に二人の人がいてボールで遊んでいたとします。それぞれAとBとします。
Aが外に出ていく時にボールをかごにしまい、その後、Bが改めてボールを箱の中にしまったとします。
Aが部屋に戻ってきた時、Aはボールを見つけるためにどこを探すでしょうか?
正解は、かごですね。Aは、Bがボールを箱の中にしまったことを知りません。
この課題に正しい答えを出すためには、事実として正しい正しくないではなく「相手が事実と違ったことを信じている」「一人ひとり持っている情報は違う」ことを理解できる必要があります。
従来、「心の理論」を持っているかどうか(相手の心を推し量れるかどうか)は、この「誤信念課題」の問題を解けるかどうかで判断できるとされていました。
ところが最近のLLMが「心の理論」のテストを解けるようになった、との実験結果を発表しています。実際、GPT-3は心の理論のテストで正答率93%と人間の9歳児と同等のスコアを記録しているそうです。