確かにガスコンロの火を消した。間違いなく重要なメールの「送信」ボタンを押した。あの牛乳パックを買い物カートに入れたことは疑いようもない。しかし、実際にはそうしていなかったことに気づく。
そのような過誤記憶がどうして起こり得るのかを、自己記憶システム(Self-Memory System)という言葉を通じて説明している。
これは人間の自己意識と記憶の間のつながりに注目した概念的枠組みだ。この相互のつながりは、人間のエピソード記憶や、自伝的記憶、そして自己概念の中で情報処理を導く作動自己概念を網羅している。
人間の作動自己概念(その時々に活性化し、時とともにかたちを変える自己概念)は、提起された知識に基づいて詳細な記憶を作るための手掛かりを得ている。
これによって、過去の記憶を構築したり、未来の出来事を想像することができる。
この構築プロセスは、最近の記憶と近々起きるかもしれないことのシミュレーションで満たされた精神空間である「記憶・想像システム(remembering-imagining system)」の中で起きる。
しかし、このシステムは時折さまざまな理由によって誤作動を起こす。
人間の記憶に関する現代的な理解は、記憶は常に正確であるという考えに異議を唱えている。実際、すべての記憶が、ある程度は偽りであるという議論さえある。