この世には「注意深くて自動車事故を起こしにくい人」と「不注意で事故を起こしやすい人」がいる。しかし、その人が本当に注意深いかどうかは当人にしかわからないのだから、保険会社は完全には把握できない。この場合は、自動車保険に入る側(=買う側)が、当人が注意深いかどうかという点について私的情報を持っているのだ。
ここでやっかいなのは、「自分は不注意で事故を起こしやすい」とわかっている人ほど保険に入りたがることだ。しかし保険会社はどの加入希望者が本当に不注意かはわからないので、結果としてすべての人に高い保険料を設定せざるをえない。すると「注意深いので事故を起こしにくい」と自分でわかっている人にとっては割高となりその人は保険を買わないので、結果として不注意な人だけが保険に入ることになりかねない。