パタゴニアは、もともと、手っ取り早く稼ぐためにつくられた会社で、リスクを取って環境問題を追求する内省的な会社をめざしていたのではない。もととなったシュイナード・イクイップメントはアルピニストのための会社で、世界一と評判のクライミング道具を作っていたが、ほとんど儲からなかった。石炭炉で金属を熱し、ハンマーでたたいてピトンを鍛造したり、押し出し成形したアルミニウムからチョックを切り出したりというきつい仕事を毎日10時間も汗水垂らしてするのではなく、事務仕事だけで簡単かつクリーンに儲けられる会社―それがパタゴニアだったのだ。ウェア事業なら高い金型を償却する必要もないし、顧客も、薄汚れたクライマーを相手にするよりはるかに幅広くなる。そのころは、コットンが石炭に負けず劣らず汚いなど、だれも知らなかった。

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