『叫び』にはいくつものヴァージョンがあり、どれもがユニークな作品だ。油彩作品には、1893年に制作されたものと1910年に制作されたものがあり、そのほかにもパステル画が2点、リトグラフ版画が多数、スケッチが数点ある。

インスピレーションのもとになったのは、ムンクが散歩をしていたときに見た素晴らしい夕焼けだった。ムンクはこの夕焼けのことを、1982年1月22日の日記にこう記している。

「ある晩、小道を歩いていると、片側に都市とその下にフィヨルドが見えた。わたしは疲れていて、体調も悪かった。わたしは立ち止まり、フィヨルドを見渡した。日が沈みつつあり、雲は血のように赤く染まっていた。自然のなかを叫びが通過していくのを感じた。叫びを聞いたと思った。そして、わたしはこの絵を描いた。雲を本当の血として描いた。色が悲鳴を上げていた。それが『叫び』だ」

「ムンクはさまざまな媒材(テンペラ、油、パステル)を使い、鮮やかではっきりした合成顔料と混ぜる実験をしていた。十分に鮮やかな、はっきりしたコントラストを際立たせる色彩にし、その表面の光沢にさまざまな程度の違いをつけることによって、『色を叫ばせる』ためだ」

『叫び』の1910年版では、夕焼けの背景と叫んでいる人物の首の部分に使われている明るい黄色の絵具がオフホワイトに変色しており、人物の頭上の湖の厚い黄色の絵具は剥がれ落ちている。

「まずは美術館内の相対湿度を何とかしなければなりません。来館者を絵に近づけない、あるいは絵を来館者に近づけない、つまり来館者が作品を鑑賞することはできるが、絵の表面に直接息を吹きかけないようにしなければなりません」

「人が呼吸すると湿気が発生し、塩化物も発散されます。鑑賞者たちの呼吸に近いところに絵を置いてはいけません」

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