プリヴィズ(pre-visualization=いわゆるテスト撮影)の先駆者といえばなんと言ってもジョージ・ルーカスとその一派、ルーカスフィルムだ。『スター・ウォーズ』のメイキング動画でお馴染みだが、このシリーズでは撮影に先立ち、ベン・バートを初めとする編集スタッフたちが主人公や脇役に扮し、真面目にバトルシーンを演じ、それを家庭用のヴィデオカメラで撮るというコスプレ動画撮影が行なわれる。その残骸として、「ぱっと見、学園祭風のお宝映像」が膨大に存在することはよく知られた事実だ。もちろん、ちょっとしたCGの合成までが検討される。
後から見返せば酔狂な作業だが、ハリウッド映画俳優たちのスケジュールをおさえ、高級取りのスタッフたちを雇用してなされる「本番」の撮影は失敗が許されないだけに、この段階での試行錯誤においてルーカスは手を抜かない。『スター・ウォーズ』ほどの大きな予算をかけ、合成映像を大量に制作する場合、こうしたプリヴィズいかんで数億ドル単位の足が出る可能性まである。
21世紀に入り、3次元空間でのプリヴィズに取り組んだ監督ジェームズ・キャメロンの挑戦は記憶に新しい。2009年に公開された映画『アバター』において、彼はまず詳細なCGヴァーチャルセットを構築し、その中を自身で練り歩き、撮影すべきカメラワークを決定したいと考えた(ジェームズはそもそもカメラマン=シネマトグラファーである)。そのために開発されたのが、ヴァーチャル空間と連動するヴィデオカメラ。そのファインダーを覗けば、CGセットやキャラクターを、現実世界のカメラマンが自らの手で撮影している感覚になれるというものだ。